現代社会は少子高齢化が進展し、企業が優れた人材を確保し、定着させるためには、積極的に健康経営に取り組むことが不可欠です。健康経営を推進するには、従業員の健康管理を重視した福利厚生の選択が必要です。

さまざまな福利厚生がある中から、健康経営に最適な福利厚生をどのように選べばよいか悩む企業も多いでしょう。

そこで、本記事では健康経営に効果的な福利厚生の選び方のポイントや、健康経営を実践している企業の具体的な福利厚生の事例を紹介し、解説していきます。

■目次

1. 健康経営とは?

健康経営は、社員の健康を個人ではなく組織全体で担う経営のあり方のことです。健康を企業の「投資」と捉えて、健康状態の把握や病気の予防、健康管理を積極的に行います。そのため、健康経営のことを「健康投資」とも呼びます。

経済産業省は、健康経営に取り組む企業に対して「健康経営銘柄」「健康経営優良法人」の表彰を行い、企業の参加を促しています。銘柄で健康経営をアピールできればステークホルダーに対して投資の効果が得られます。

特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後は、社員の健康に気を使う経営者も増えており、さまざまな健康経営の事例が知られているのです。

健康経営について詳細はこちらをご覧ください:
 健康経営とは?意味や背景、コロナ後の状況を解説

2. 福利厚生で健康経営を取り入れるメリット

健康経営と福利厚生の関係は、社員の健康や心身の充実を図るという点で密接に関連しています。福利厚生で健康経営を取り入れるメリットは、生産性向上による業績の改善や株価の上昇、長期的な収益性を高めることです。

健康を気づかった福利厚生の例は、有給休暇や健康診断、人間ドックの費用給付、運動の促進などです。社員にとっては健康を考えてくれる企業は、エンゲージメント(忠誠心)を高める結果となるため、人材の定着、離職率の低下などが見込めます。

さらに、ワークライフバランスがとりやすく従業員にとって働きやすい企業だという印象が強まり、企業イメージの向上や採用に効果的な役割を果たすでしょう。

3. 健康経営に効果的な福利厚生の選び方

先のメリットを踏まえて、健康経営に効果的な福利厚生の選び方を下記に説明します。

心身の健康管理・メンタルヘルス対策

福利厚生は社員が健康に働くための心身の管理が重要です。そこで、メンタルヘルス対策に力を入れることが必要になります。メンタルヘルス対策の具体例は、産業医と連携して、相談できる体制を作り、ストレスチェックや相談窓口の設置などが挙げられます。

しかし、会社側の対策だけでは不十分なケースも多いため、社員一人ひとりがセルフケアするための研修を実施することも大事です。食事や運動の重要性、休暇のとり方などを指導し、健康経営の福利厚生が効果を発揮できるようにします。

食生活の改善

2つ目は、社員が健康を維持できるような食生活の改善を企業が率先して行うことです。例えば、栄養バランスのとれた食事ができる社員食堂や宅配サービス、昼食代の費用補助、置き型社食の導入などを実施することです。

個人が栄養を管理して食事を摂ることは意外と難しく、毎日行うには企業側の工夫も必要です。

肥満対策・運動不足解消

社員の健康を維持・促進するためには、肥満を予防したり、運動不足を解消したりすることが大切です。しかし、普段の業務で忙しい社員にとって、個人で運動不足の解消を目指すためには、高い意志と継続性、費用負担が必要となり、現実的ではありません。

そこで、次のような方法で運動を促します。

・ヘルスケアアプリの利用
・ジムの費用補助を出す
・オンラインフィットネスを社内に導入する

特に肥満を予防するには運動が最適です。無理なダイエットをするよりも健康的で、日常的な運動不足の解消にもつながります。

働き方の整備・ワークライフバランス

無理な働き方はモチベーションにも影響を与えて、心身が疲れやすくなります。心身の疲労は放置すると重大な疾患や精神への影響、最悪の場合では過労による自殺などもありえるほど社会問題化しているのです。

そこで、健康経営を目指す企業は、福利厚生の中に個々の事情に合わせた多様な働き方を可能にする制度を導入します。社員が働きやすい環境はモチベーションの向上にも繋がります。心身の健康の維持だけでなく、業績や能率の向上にも直結するため重要です。

4. 福利厚生で健康経営を取り入れている企業事例

これまでの福利厚生を踏まえた健康経営を目指す場合、企業事例についても知っておきたいところです。以下に、企業独自で、あるいは外部のサービスを取り入れて成功している福利厚生について説明します。

4-1:心身の健康管理・メンタルヘルス対策

まずは、心身の健康管理で重要な対策をしている2つの企業事例を紹介します。

イトーキ

株式会社イトーキでは、メンタルヘルス対策として「セルフケア」「ラインケア」「内部EAP」「外部EAP」の4つのケアを実施しています。セルフケアでは、社員の研修・教育や「マインドフィットネスゾーン」と呼ぶスペースの設置。ラインケアでは全ての管理職に対して部下の心のトラブルに気づくための研修・教育をします。

それからEAPとは、従業員支援プログラムのことです。内部EAPでは健康推進室に保健スタッフを常駐させており、外部EAPでは「社外相談窓口」を設置し、電話やメールで24時間相談できます。他にも、ストレスチェックの実施や復職支援プログラム(休業した職員向けの対策)などもおこなっています。

参考サイト:https://www.itoki.jp/company/health/mental-health.html

Sansan

Sansan株式会社では、「マインドフルネス研修」という特別な研修を実施しています。社員一人一人がマインドフルネスな状態になるプロセスを知ることで、会社全体としてのパフォーマンス向上を目的として行う研修です。

2018年にSansanが全社員を対象に全社規模で行われたマインドフルネス研修は国内初です。

マインドフルネス研修では、脳科学を最初に学び、呼吸を意識した実践に移ります。呼吸の後は、「ジャーナリング」というワークを実施し、新たな価値観をリマインドする研修です。マインドフルネス研修を通じて、自分のことを意識的に見つめ直す方法を身に付けられます。

参考サイト:https://jp.corp-sansan.com/mimi/2018/03/siy.html

4-2:食生活の改善

次に、食事の提供や改善に関する2社の事例を紹介します。

ベネフィット・ワン

株式会社ベネフィット・ワンの事例では、食生活の改善として「朝食サービス」と「夕食サービス」を社員に実施しています。具体的なサービス内容として、「朝食サービス」では、スムージーやオートミールといったヘルシーな食事を無料で提供し、「夕食サービス」では、残業時に会社が社員の夕食を準備するなどです。

社員の健康面に配慮すると同時に、自社のネットワークを最大限活用し、フードロスの観点から賞味期限が迫った商品を大幅な割引で仕入れを行うなどの取り組みも行なっています。

参考サイト:https://corp.benefit-one.co.jp/sustainability/kenkokeiei/

オートバックスセブン

株式会社オートバックスセブンでは、「おかん食堂」を活用して社員の食事バランスのサポートをしています。「おかん食堂」とは、管理栄養士が考えた惣菜メニューを提供する置き型社食のサービスです。

バラエティに富んだ野菜や魚、肉などの惣菜を社内で安い料金で販売し、いつでも食べられるようにしています。食堂のように時間に制約がなく、食事バランスのサポートがいつでも可能な事例です。

参考サイト:https://www.autobacs.co.jp/ja/sustainability/activity/health.html#a02

4-3:肥満対策・運動不足解消

健康経営の福利厚生で運動不足の解消を実現した2つの事例が以下です。

丸井グループ

丸井グループは、メタボ率の改善に向けたヘルスアッププログラムを実施しています。ヘルスアッププログラムは、健保の医療スタッフが実施する独自のプログラムです。人間ドッグ当日の面談や上長を通じての勤務時間内のプログラム実施などを行います。

結果として、2008年のプログラム開始以降、メタボ率は大きく減少。社内の風土も人間ドッグを受けて当たり前という考えがすでに根付いており、上記の対策が形骸化していない企業事例です。

参考サイト:https://www.0101maruigroup.co.jp/sustainability/theme02/health_03.html

テックファームグループ

テックファームグループでは、運動不足解消の一環として「自転車通勤」を制度として取り入れています。企業から手当が出ることで公式に自転車通勤を促しているのも大きなポイントです。

自転車通勤には、リフレッシュ効果をはじめ、健康促進、通勤時間の短縮などのメリットがあります。特に普段から運動習慣がなく、業務内容もあまり体を動かさないエンジニア職や事務職の場合には、運動不足の解消にもつながっています。

参考サイト:https://www.techfirm-hd.com/techvoice/bicycle2

4-4:働き方の整備・ワークライフバランス

最後に、社員の働き方やワークライフバランスの福利厚生の事例です。

大和ハウス工業

大和ハウス工業では、介護の問題に関連し、期限に上限のない「介護休業制度」を実施してきた経緯があります。しかし、親が遠方に住む社員にとっては帰省の費用が負担となることも多く、「親孝行支援制度」という制度を立ち上げました。

制度の具体的な内容は、距離別補助金を片道の距離(200km未満は支給なし)と回数で15,000円~55,000円の一定金額を支給するというものです。この制度のおかげで、介護で会社を辞める人を止めるなど人材流出の防止や安心してキャリア形成をできる環境を整えています。

参考サイト:https://www.daiwahouse.co.jp/release/20150327094033.html

大王製紙

大王製紙は、育児応援制度と合わせて、代表者が「男性育休100%宣言」にも参加し、社風改革の実現を目指しています。例えば、経営層や部長に働き方改革の研修を施し、管理職には男性にこそ育休が必要となることの研修を実施しているのです。

また、プレパパ(もうすぐ父親になる人)には「企業主導型父親学級」を開いて交流やコミュニケーションの場を設けています。育児休暇の福利厚生に重点を置いた企業の事例です。

参考サイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000274.000028029.html

6. まとめ

今回は、福利厚生で健康経営を取り入れている企業の事例について紹介しました。健康経営を目指す企業にとって、福利厚生は具体的な形にして社員の健康を維持・増進するための手段となります。

効果的な福利厚生を選択するためには、企業が目指す健康経営のあり方やビジョンを明確にすることが大事です。4つの選び方で福利厚生に健康経営を取り入れた結果、業績改善や人材の定着、対外的なイメージアップが図れたという企業も続々と出ています。

弊社では、フィットネスやストレッチ、ヨガ、マインドフルネスなどのオンラインでの健康レッスンを通じて従業員の健康を支援する企業向けのヘルスケアサービスを行なっています。従業員同士のコミュニケーションを重視した健康レッスン、マンネリにならない楽しい健康プログラムなどのご提供が可能です。

健康経営に関連する福利厚生についてご検討中のご担当者様、ぜひ一度お問い合わせください。