スポーツ庁が認定する「スポーツエールカンパニー」が毎年発表され、2024年は1,246社が選ばれるなど、年々注目が高まっています。

健康経営に取り組む企業の認定制度としては、経済産業省の「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」が比較的有名です。「健康経営優良法人」が医療的支援などを含めた健康に対する取組全般を評価するのに対して、「スポーツエールカンパニー」は特にスポーツ・運動に対する取り組みが評価されるものです。

本記事では、スポーツエールカンパニーの概要やメリット、取り組み事例について解説します。

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■目次

1. スポーツエールカンパニーとは?

スポーツエールカンパニーとは、スポーツ庁が認定する制度で、従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取組を行っている企業が対象となっています。

スポーツ庁が実施した世論調査において、成人の週1回以上のスポーツ実施率が20代~50代の「働き盛り世代」で全体の平均より低くなっているという結果が出ました。仕事や家事・育児により時間が取りづらいこの世代がスポーツを行うためには、1日の大半を過ごす職場でスポーツを習慣的に行える環境を整えていく必要があるとして導入されたものです。

そして、認定された企業の取組を広く周知することで、ビジネスパーソンのスポーツ実施率の向上を目指すとともに、従業員の健康管理を考え戦略的に取り組んでいる企業の社会的評価の向上を図っていきたいとしています。

2017年より開始されたこの認定制度には、現在までに述べ3,000社以上の企業が選ばれています。

さらに、スポーツ実施率の高い企業や、5回以上の認定を受ける企業などには、追加で下記のようなプラスの評価を行う仕組みもあります。

1.従業員の週1回以上のスポーツ実施率が70%以上の企業には、+(プラス)の呼称を付与

2.通算して5回以上認定を受ける企業には、認定回数等に応じて以下のとおり認定マークの色及び呼称を付与
(ア)認定回数5回~6回:Bronze(ブロンズ)
(イ)認定回数7回~9回:Silver(シルバー)
(ウ)認定回数10回以上:Gold(ゴールド)
(エ)上記(ア)~(ウ)の企業のうち、上記①に該当する企業:+(プラス)

スポーツエールカンパニーのロゴマーク

▲スポーツエールカンパニーのロゴマーク

2. スポーツエールカンパニーに認定されるには

スポーツエールカンパニーに認定されるには、スポーツ競技に限らず、社員の健康増進のためスポーツの実施に向けた積極的な取組を、会社全体・事業所全体で行う必要があります。

想定される取組例:

  • 朝や昼休みなどに体操・ストレッチをするなどの運動機会の提供
  • 階段の利用や徒歩・自転車通勤の奨励
  • スタンディングミーティングの実施
  • 終業後、休日などの地元のスポーツイベントや企業運動会への参加 など

注意点としては、業務としての運動ではないところです。スポーツジムのトレーナーである従業員が業務としてトレーニングをする行為や、建設現場で重いものを持って体を動かす行為は、認定対象とはなりません。また、従業員のスポーツ観戦を支援する取組や、スポーツ団体やアスリート大会を支援している等の取組についても対象外となります。

なお、申請対象となるのは国内に本社又は事業所が所在し、Sport in Lifeコンソーシアムに加盟申請(同時提出可)を行っている企業となります。

※Sport in Lifeコンソーシアムについて詳しくはこちら
https://sportinlife.go.jp/

3. スポーツエールカンパニーに認定されるメリット

▶ 企業としてのブランディング(認知度向上・人材確保)

スポーツエールカンパニーに認定されると認定証が交付され、スポーツ庁のSNSサイトに掲載されます。各企業でも、プレスリリースとして配信するところが多い様です。

また、認定マークはハローワーク(公共職業安定所)の求人票等(ハローワークインターネットサービス)に表示できるPRロゴマークに掲載することができ、人材確保にもメリットがあります。

スポーツエールカンパニーロゴマークのハローワーク求人票への表示方法

▲ハローワークの求人票(見本)

▶ 従業員の健康増進(メンタル面の改善、身体面の改善、総じてQOLの改善)

スポーツエールカンパニー認定企業の従業員アンケートで、もっとも評価されたのは健康増進です。「生活リズム・睡眠の質が改善した」「血液検査項目で全て改善が見られ正常値になった」などの声があがっています。
メンタル面や身体面の改善によって、生活の質(クオリティーオブライフ:QOL)向上にもつながり、従業員ひいてはその家族の幸福度も上がるという効果も期待できます。

▶ 組織文化の醸成(部内外のコミュニケーション活性化)

スポーツを通じたイベントなどによって、普段交流のない部外のコミュニケーションの機会が増え、また上司と部下であっても業務外の会話などによって相互作用が働き、コミュニケーションが活性化、さらにイノベーションの創出にもつながる可能性があります。

▶ 生産性の向上(欠勤・離職などの減少)

従業員のメンタル、身体の改善は、欠勤・離職などを減らし、生産性の向上にもつながります。心身ともに健康な従業員は、仕事に対してより高いモチベーションを持ちます。また、ストレスや疲労が少ない状態では、仕事の効率も向上します。従業員が健康であることは、生産性の向上に直結すると言えます。

4. スポーツエールカンパニー認定企業の取組み事例

ここでは、スポーツエールカンパニー認定企業の中から、実際に行なっている取組事例をいくつかご紹介します。

■ 花王

・定期的な運動イベントの開催
春のウォーキングキャンペーン、秋の運動宣言イベントを開催。また、自社開発した健康管理アプリを運営し、目標達成者には花 王製品を贈呈。

・オンラインラジオ体操
運動不足、腰痛対策などに対応して全国の産業看護職が共同で企画。オンライン開催で、参加者5,000人以上の大イベントとなる。

・加速度センサー付き歩数計の配布
希望者に加速度センサーのついた歩行計を配布。歩行に関する詳細なレポートを取得でき、健康管理アプリと連動して、日々の活動、体重や食事の記録をし日々の健康づくりを管理。各事業場/支社ごとに歩行数の対抗戦なども実施。

出典:https://sportinlife.go.jp/img/news/20220126_1/02.pdf

■コロプラ

・部活動制度
仕事以外のところでも幅広い交流ができるよう運動系、文化系を合わせて約30種類の部活動を支援

・毎日ラジオ体操の開催
ラジオ体操部と人事部門が連携し、社内で毎日ラジオ体操を実施。出社している人だけでなく、在宅勤務者もオンラインで参加。

・社内向けサイト「健康支援ポータルサイト」の開設
アスリートによるファスティング講座や、常駐するヘルスキーパーによる肩こりや腰痛を改善する情報をはじめ、食事や睡眠など健康に関する情報を定期的に発信

出典:https://colopl.co.jp/news/info/2023030701.php

■ PHONE APPLI

・外部講師による健康ワークショップをオンラインで定期的に開催
健康経営を推進する社内の組織横断プロジェクトチームが企画し開催。健康増進や健康意識の向上に効果。

・「ウォーキングイベント」を毎月開催
ヘルスケアアプリと連携して消費カロリー、運動時間などを取得し、合計歩数を走行距離として参加者全員で日本横断を目指す企画や、チーム対抗戦などを実施

・「オンライン宅トレ」を毎日お昼時間に開催
毎日12時45分~12時55分まで、10分間、オンラインの「宅トレ」を開催。「肩こり解消」「ストレス解消」「ダイエット」など、様々なテーマ動画を日替わりで放送しながら実施。

出典:https://phoneappli.net/2023/02/20230222-press.html

5. まとめ

スポーツエールカンパニーは、まだそれほど知名度はないですが、毎年申請する企業数が増えているこれから注目の健康経営の認定制度です。

経済産業省の「健康経営優良法人」などよりも、審査項目が少ないため比較的取り組みやすく、費用も抑えられます。今後「健康経営優良法人」を目指したい企業や、従業員の健康のために何かしたいと思う経営者の皆様、人材確保に課題を持つ中小企業の人事部の皆様、まずスポーツエールカンパニーから取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。

弊社サービスをご利用いただいているお客様にも、スポーツエールカンパニーに認定されている企業様がいらっしゃいます。そのノウハウを活かして、ご提案することができます。

従業員の健康推進を検討中のご担当社様、ぜひご状況をお聞かせください。