充実した働き方や従業員の幸福度向上を目指すウェルビーイング経営が、企業の競争力アップには不可欠だとして注目を集めています。従業員の心身の健康を維持し、社会生活も含めて働きやすい環境を整えることは、企業の生産性や創造性の向上や離職率の低下に寄与するというメリットがあります。

しかし、実際には「どのようにウェルビーイング経営を導入したらいいかわからない」「具体的な取り組み事例を知りたい」というご担当者様も多いのではないでしょうか?本記事では、ウェルビーイング経営の概要、企業の取り組み事例や、さらには導入時の課題と可視化について解説していきます。

ウェルビーイングの記事についてはこちら、
    ウェルビーイングとは?意味と測定する指標について解説

■目次

1. ウェルビーイング経営とは?

ウェルビーイング経営とは?

まず、「ウェルビーイング」とは個人や組織が身体的、心理的、社会的に健康で幸福な状態にあることを指すひとつの「概念」です。したがって、「ウェルビーイング経営」とは、従業員が心身ともに健康(ウェルビーイング)な状態であることを目指し、社員のモチベーションやパフォーマンスの向上につなげることを目的とした経営手法となります。

ウェルビーイング経営は、従業員の働き方や生活の質を向上させることで、労働生産性の向上や離職率の低下を促進します。従業員が健康で快適な環境で働くことは、企業の成長と社会の発展につながります。ウェルビーイング経営に取り組むことで、企業の競争力を高めることも可能です。

「ウェルビーイング経営」と「健康経営」

「ウェルビーイング経営」と似たように使われる言葉として「健康経営」があります。両者とも、企業経営において従業員の幸福度と健康促進を重視する取り組みのことを指しますが、異なる点もあります。

「健康経営」の定義は、「従業員等の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」です。特徴としては、「経営的視点」から捉えていること、従業員の心身の健康状態を改善することに焦点を当てている経営スタイルだということです。

一方「ウェルビーイング経営」は、「個人や組織が身体的、心理的、社会的に健康で幸福な状態にあること」と定義されている通り、「従業員視点」からのアプローチであること、心身の健康にプラスして従業員の社会的な幸福感を促進することを重視した経営スタイルであることが特徴です。

しかしながら「ウェルビーイング経営」と「健康経営」は、従業員の心身の健康を促進することによって生産性を向上させ、離職率の低下を促す点において共通しており、実際の取り組みとして大きな違いはないのも現状です。企業は目標やニーズに応じて自社に最適な取り組みを取捨選択し、従業員の幸福度の向上とともに組織の発展を追求することが重要です。

健康経営についての記事はこちら、
 健康経営とは?(アフターコロナの健康経営)

2. 企業の取り組み事例

企業の取組事例

海外企業の取り組み

■Google(グーグル)

ウェルビーイング経営を実践している企業として世界的に認知されているのがGoogleです。

同社が行った「プロジェクト・アリストテレス」という労働改革プロジェクトにおいて、成果を出し続けるチームの共通点を見つけました。それは「心理的安全性(psychological safety)」です。心理的安全性とは、無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だと信じられるかどうかを意味します。

心理的安全性の高いチームは、離職率が低く、他のメンバーが提案した多様なアイデアを上手く利用し、収益性が高く、マネージャーから評価される機会が2倍であることが分かりました。同社ではこの結果を元に、各チームを対象にワークショップなどを行っています。

参考:Google re: work「効果的なチームとは何か」を知る

■セールスフォース・ドットコム

ウェルビーイングを経営の中心に据えている同社は、従業員が毎日をあらゆる点で豊かに生活する手助けをするための仮想上の場所、ウェルビーイング本部「Camp B-Well」を導入しました。Camp B-Wellでは、福利厚生や専門家のサポート、自分が集中すべきことを見つける「マインドフルネスの日」や、シェフ、作家、冒険家などの講演者を招いて年間を通して開催されるウェルビーイングイベントなどを提供しています。

その他にも、メンタルケアや法律相談がいつでも受けられる従業員支援プログラム、健康を維持する活動に対し補助金が受けられるウェルビーイング費用補助プログラムなどを導入しています。

日本企業の取り組み

■楽天グループ

同社は、従業員の心身の健康および社会的なウェルビーイングの向上を目指すことを、楽天健康宣言 「Well-being First 」として掲げています。

代表取締役社長をトップに位置づけた健康・安全・ウェルネス経営の推進体制をグループ全体で構築し、常務執行役員の一人をCWO(Chief Well-being Officer)として、ウェルネス部を中心にブループ企業全体でBody(健康的な体)、 Mind(健康的な心)、 Social(健康的な社会とのつながり)を促進するための様々な取り組みを行っています。

従業員の心身の健康状態は定量的にモニタリング。アブセンティーイズム(欠勤・休職など業務自体が行えない状態)、プレゼンティーイズム(心身の健康上の問題が作用して、パフォーマンスが上がらない状態)、 Total Employee Experience(仕事に対する活力の度合い)などの調査を毎年行っています。

また、ヨガやストレッチ、体操教室などのイベントも定期的に開催、全従業員が参加する朝会ではストレッチ時間を設けるなど、参加者の一体感を高めています。

参考:楽天グループ 健康・安全・ウェルネス

■イトーキ

同社は、組織の生産性と創造性向上による新たな価値創造と、従業員のワークエンゲージメント向上によるウェルビーイングの実現を目的として、従業員の自己裁量を最大化し、ワーカー自らが働き方を自律的にデザインしていく、新しい働き方をすすめています。具体的には、いつでも、どこでも、誰とでも働ける「Activity Based Working(以下ABW)」の考え方を導入。導入にあたっては従業員の意識改革ためのワークショップや、先進のICT技術を活用した「働き方変革アプリケーション」の開発などを行っています。

また、新本社開設にあたっては、能動的かつ自由な働き方を実践する社員の心身を健全に保つ、Well-being(ウェルビーイング)の概念にもとづく空間品質基準「WELL Building Standard※」をオフィス空間に導入しました。

※WELL Building Standard(WELL認証)とは環境・エネルギー性能に加えて、建物内で暮らし、働く居住者の健康・快適性に焦点を当てた世界初の建物・室内環境評価システム。評価項目は①空気、②水、③食物、④光、⑤フィットネス、⑥快適性、⑦こころ、の7つのカテゴリーに分けられ、獲得ポイント数に応じてプラチナ、ゴールド、シルバーの認証を付与される。

3. ウェルビーイング経営の課題と可視化

ウェルビーイング経営を導入するにあたり、いくつかの課題が存在します。以下にその課題とウェルビーイングの可視化について説明します。

課題

1.従業員の意識の向上

ウェルビーイング経営を効果的に導入するためには、従業員の意識の向上が重要です。多くの場合、従業員は仕事に追われる中で自身の健康や幸福度を後回しにしてしまうことがあります。そのため、ウェルビーイング経営に取り組む企業は、従業員に対して定期的な健康教育や心理的なサポートを提供することが必要です。

2.効果測定の難しさ

ウェルビーイング経営の効果を測定することは、容易なことではありません。従業員の幸福度や健康の改善は多くの要素に影響されるため、単純な数値やデータだけで評価することは難しいです。効果測定のためには、従業員のフィードバックや定期的な健康チェックなど、複数の方法を組み合わせる必要があります。

3.ウェルビーイングには個人差がある

ウェルビーイングは人それぞれ異なる概念であり、従業員の状態やニーズに合わせたアプローチが必要です。一つの解決策が全ての従業員に適しているわけではないため、個別のサポートや柔軟な取り組みが求められます。企業は従業員とのコミュニケーションを重視し、彼らのニーズや要望を把握することが重要です。

テクノロジーによる可視化

これらウェルビーイング経営の課題を解決する一つとして、テクノロジーの進歩を利用する方法が選択肢に加えられるようになってきました。

例えば、従業員の健康データや生活スタイルに関する情報を収集し、分析することで、ウェルビーイングの状態を可視化することが可能です。ウェアラブルデバイスやアプリを活用して従業員の運動量や睡眠時間をモニタリングすることで、健康改善の進捗状況を把握することができます。

また、表情認識AIでウェブカメラでとらえた表情から感情を推定し、個人の幸福度を定期的に判定することで、個人差のある効果を捉えることもできるようになるでしょう。

4. まとめ

ウェルビーイング経営は、従業員の幸福度向上と企業の競争力向上を両立する方法として注目されています。ウェルビーイング経営の導入には課題もありますが、効果を可視化するためのツールや手法も進化しています。企業が従業員の健康と幸福を大切にすることで、生産性や創造性を向上させることができます。ウェルビーイング経営を取り入れることで、企業と従業員双方の成果を最大化しましょう。

LOOOMは、フィットネスやストレッチ、ヨガ、マインドフルネスなどの健康レッスンを通じて従業員の健康を支援する企業向けのヘルスケアサービスです。従業員同士のコミュニケーションを重視した健康レッスン、マンネリにならない楽しい健康プログラムなどのご提供が可能です。

ウェルビーイング経営で従業員の幸福度向上を目指す、企業の経営者、人事部門のご担当者様、ぜひご状況をお聞かせください。