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東京証券取引所の上場企業の中から、健康経営に優れた企業が選定される「健康経営銘柄」。2024年3月11日に「健康経営銘柄2024」選定企業27業種53社が発表されました。

年々関心が高まる健康経営ですが、特に「健康経営銘柄」に関心を持つのは人事・総務の担当者だけではありません。ESG投資や長期的な企業価値向上を重視する投資意欲が高まっていることから、投資家やIR・広報担当者からも注目を集めています。

本記事では、健康経営銘柄とはどのような制度なのか、選定基準や選定プロセス、2024年に新たに重視された評価対象などを詳しく解説します。さらに、健康経営銘柄に選ばれた具体的な企業の最新の取り組み事例も紹介します。

健康経営への関心が高まる中、企業の生産性向上や従業員のウェルビーイングを実現するためのヒントが満載です。

■目次

1. 健康経営銘柄とは?

ここでは、「健康経営銘柄」とは何か、や「健康経営優良法人」「ホワイト500」との違いについて、まずは基本を押さえましょう。

健康経営銘柄とは

「健康経営」とは、従業員の心身の健康が企業の収益性等を高めると考え、健康管理を経営として戦略的に実行していくことです。日本では健康経営を国としても推進しており、経済産業省と東京証券取引所は「国民の健康寿命の延伸」に対する取り組みの一環として「健康経営銘柄」を選定しています。

健康経営に関する取り組みの調査を行い、健康経営優良法人(大規模法人部門)の上位500位以内の上場企業から、一定の評価基準によって1業種1社を基本として選定されます。長期的な視点から企業価値向上を重視する投資家にとって、魅力ある企業として紹介するものです。

年々、健康経営を目指す企業は増えており、令和5年度の健康経営に関する調査の回答企業数は3520社(法人)となり、前年度から351社(法人)増加しました。このうち上場企業の回答は1,203社。日経平均株価を構成する225社にいたっては8割以上が回答するという結果となっています。

参考:経済産業省「健康経営銘柄」

健康経営優良法人/ホワイト500との違い

「健康経営優良法人」認定制度は、経済産業省において日本健康会議が中心となり設計と運用を担い、認定した健康経営優良法人を公表しています。「健康経営優良法人」は、健康経営を実践している優良な法人を認定することを通じて、従業員や求職者、関連会社や金融機関などから社会的な評価を受けられるようにすることを目的としています。

認定された企業のなかでも、大規模法人部門の上位500社には「ホワイト500」、中規模法人部門の上位500社には「ブライト500」の冠が与えられます。

2024年3月11日に第8回目となる「健康経営優良法人2024」が発表され、大規模法人部門に2,988法人が、中小規模法人部門に16,733法人が認定されています。

健康経営優良法人について、詳しくはこちらの記事をご覧ください:
健康経営優良法人とは?概要・メリット・認定状況をわかりやすく解説

「健康経営銘柄」は、この大規模法人部門の上位500社「ホワイト500」にランクインした企業のうち、特に優れた「上場企業」が選定されるものです。具体的な選定要件については下記で解説します。

2. 健康経営銘柄を目指すメリット

健康経営銘柄に認定されると、次の3つのメリットがあります。

・従業員の健康増進による業績向上
・離職率の低下
・企業イメージの向上

以下に、詳しく解説します。

・従業員の健康増進による業績向上

健康経営に取り組むことで、従業員の健康状態の適切な把握や改善に向けた施策が増えます。健康だからこそ従業員は高いパフォーマンスを発揮でき、生産性が高まり、結果的に企業の業績も向上につながります。

・離職率の低下

離職率の低下に関して、従業員の健康を積極的に支援する企業は、従業員の満足度が高まる傾向にあります。なぜなら健康経営には職場環境や人間関係を円滑にすることも含まれ、安心して働ける環境づくりにつながるためです。

・企業イメージの向上/株価の向上

企業イメージの向上にもつながります。健康経営への取り組みが社会的に評価されれば、企業のブランド力が高まります。優秀な人材の採用や、顧客・取引先との信頼関係構築など、様々なステークホルダーからの信頼を得やすくなります。

また、「健康経営銘柄」に選定されると、経済産業省と東京証券取引所において公表され、投資家からの注目を集めることができます。健康経営に取り組み、従業員の健康に投資する企業という評価が高まれば、株価の向上も期待できます。

3. 健康経営銘柄2024の選定

健康経営銘柄2024は27業種53社が選定されました。ここでは、選定におけるプロセスや要件について、詳しく解説します。

健康経営銘柄2024の選定プロセス

健康経営銘柄2024の選定プロセスは以下の流れで実施されました。

①「令和5年度健康経営度調査」を実施(令和5年8月〜10月)

経済産業省が実施する、従業員の健康管理の取り組みやその成果を把握する目的で実施する「従業員の健康に関する取り組みについての調査」(健康経営度調査)に各企業が回答します。

②評価基準にもとづき「健康経営」に優れた企業を選出する(令和5年10月~11月)

①に回答した企業を評価基準に基づいて評価します。

さらに、東京証券取引所上場企業(TOKYO PRO Market上場会社を除く)を対象として、健康経営優良法人(大規模法人部門)に申請している法人のうち上位500位以内であり、かつ選定要件を満たしている企業を「健康経営」に優れた企業(選定候補)として選出します。

※ただし、重大な法令違反等がある場合には除外される

③財務指標スクリーニング等を経て「健康経営銘柄2024」を選定(令和5年11月~令和6年2月)

②で選定した候補企業を対象に、ROE(自己資本利益率)に基づくスクリーニングや加点を行い、前年度の調査への回答有無、社外への情報開示状況等についても評価を行います。評価結果が同業種内で最高順位企業、および全業種最高順位企業の平均より優れている企業を「健康経営銘柄2024」として選定します。

※原則として33業種ごとに1社を選定。上記の一定の基準を満たしている場合には1業種から2社以上を選定するが、1業種あたりの選定数は最大5社までとする

健康経営銘柄2024の選定プロセス

健康経営銘柄2024の選定基準

経済産業省が公表している主な選定基準は、以下の通りとなっています。

 1. 重大な法令違反等がない。
 2. 健康経営優良法人(大規模法人部門)申請法人の上位500位以内である。
 3. ROE(自己資本利益率)の直近3年間平均が0%以上または直近3年連続で下降していない企業を対象とし、ROEが高い企業には一定の加点を行う。
 4. 前年度回答有無、社外への情報開示の状況についても評価し、一定の加点を行う。

健康経営銘柄2024の選定要件

健康経営銘柄2024および健康経営優良法人2024(大規模法人部門)の評価項目および選定要件は以下の通りです。

健康経営優良法人2024認定要件

4. 2024年に重視された評価対象

社会動向などをふまえ、健康経営度調査の内容は毎年変更が行われています。2024年において重視された評価対象は以下のとおりです。

・情報開示の促進

企業単位の特定健診・特定保健指導の実施率、パフォーマンス指標や測定方法が新たに評価対象とされました。また、労働安全衛生・リスクマネジメントの開示状況も確認されています。

・社会課題への対応

女性の健康課題に取り組む企業をより一層促進するために、仕事と育児・介護の両立支援に関する設問が新設されました。国の関連施策への参加状況を開示しているかどうかを評価の対象とし、認知向上のための取り組み状況や行動変容促進の取り組みに関する2つの質問への回答をもって認定要件としています。

また、生産性低下防止のための取り組みとして、花粉症および眼精疲労に対する具体的な支援内容に関する設問を追加しています。 新型コロナウイルス感染症への対応については、5類感染症への移行を踏まえ、インフルエンザ等を含む感染症対策を問う設問へ統合されました。

・国際展開

健康経営を国際的に展開するため、海外駐在員や現地法人の社員の健康推進・健康課題への対応を把握する設問が新設されました。

参考:健康経営銘柄2024 選定企業紹介レポート

5. 2024年健康経営銘柄に選定された企業の取組事例

第10回目となる健康経営銘柄2024において、27業種から53社が選定されました。その中から具体的な取り組み事例を紹介します。

サントリー食品インターナショナル株式会社(2587)

プラス10分の運動習慣目標「Activeプラス10宣言」

第一三共株式会社は今回初めて認定されています。

同社では、企業理念とビジョンの実現に向けて、「生活習慣病、がん、メンタルヘルス、運動機能」を重点テーマとし、社員の健康と安全を保つ取り組みを推進しています。

近年のテレワーク就業において、上司と部下が直接顔を合わせる機会減少の対策として、リモート環境でのラインケアの整備が喫緊の課題でした。そこで、従来の年1回のストレスチェックの実施に加え、全社員を対象に年4回のエンゲージメントサーベイを実施。スコアが一定基準以下の場合や前回から急低下した場合に、上司や人事が対象者への声掛けや面談などにつなげる環境整備を行いました。

その結果、ストレスチェックにおける高ストレス者率を前年の5.2%から4.3%に改善しています。

参考:サントリーの人本主義

第一三共株式会社(4568)

就業環境の変化による従業員のメンタルヘルスをサポート

第一三共株式会社は今回初めて認定されています。

同社では、企業理念とビジョンの実現に向けて、「生活習慣病、がん、メンタルヘルス、運動機能」を重点テーマとし、社員の健康と安全を保つ取り組みを推進しています。

近年のテレワーク就業において、上司と部下が直接顔を合わせる機会減少の対策として、リモート環境でのラインケアの整備が喫緊の課題でした。そこで、従来の年1回のストレスチェックの実施に加え、全社員を対象に年4回のエンゲージメントサーベイを実施。スコアが一定基準以下の場合や前回から急低下した場合に、上司や人事が対象者への声掛けや面談などにつなげる環境整備を行いました。

その結果、ストレスチェックにおける高ストレス者率を前年の5.2%から4.3%に改善しています。

参考:第一三共 社員の健康と安全

大日本印刷株式会社(7912)

社員の幸福度を高めるヘルスウェルビーイング

大日本印刷株式会社は今回初めて認定されています。

同社では、DNPグループで掲げる人的資本ポリシーや健康宣言に基づき、社員の幸福度を高めることで企業価値の向上に努めています。

今回の取り組みでは、活力ある職場風土づくりや組織・チーム力の強化に向けて、エンゲージメントサーベイを導入。また、社内の優れた取り組みを表彰する「ヘルスウェルビーイング表彰」やDNPグループ健康宣言で掲げられた「こころの資本」「心理的安全性」を高める取り組みを推進しています。

具体的な取り組みとして、1on1ミーティングや月1時間の対話・教育活動「ツキイチキョーイク」、健康保険組合と共同で女性特有の健康関連課題への対応の充実、生活習慣やメンタルヘルスケアにおける教育・研修を実施しています。

参考:DNPグループ健康宣言

丸紅株式会社(8002)

フェムテック活用によるプレゼンティーズム改善

丸紅株式会社は2015年、2023年に続き3度目の認定企業です。

同社では、社員一人ひとりの健康維持・増進を重要な経営課題と位置づけ、健康リテラシーの向上、がん・生活習慣病対策、メンタルヘルス対応、女性の健康維持・増進の取り組みなどを強化しています。

特に、今回認定された取り組みは、女性社員が活躍し続けられる環境づくりです。フェムテックを活用し、生理痛・PMS(月経前症候群)や更年期症状の不調に対するオンライン診療・相談・服薬指導・処方等を女性社員に提供することで、プレゼンティーズムの改善につなげています。また、セミナーを開催し、女性特有の健康課題を男女ともに学び、社員同士の相互理解を促進しました。

参考:丸紅グループ健康宣言

株式会社ディー・エヌ・エー(2432)

オンライン参加可能な社内運動会「Fit Festa Online」

株式会社ディー・エヌ・エーは2019年、2020年に続き3度目の認定となりました。

同社では「社員一人ひとりのDeNA流ウェルビーイング実現へ」を目標とし、社員の心身の健康をサポートしています。

今回の具体的な取り組みとしては、社員が楽しめる取り組みをボトムアップで推進しています。コロナ禍の2021年から「運動×コミュニケーション」をテーマとし、オンラインでも参加可能な社内運動会「Fit Festa Online」を実施。自社スポーツチームの観戦ツアーやeスポーツ大会を実施するなどし、対面とオンラインの両方を組み合わせた取り組みです。アンケートでは、ほぼ全員が楽しめたと回答し、半数以上が「運動を始めるきっかけや意識改善につながった」と回答しています。

そのほか、女性特有の疾患など有症者への診療サポートにも積極的に取り組んでいます。

参考:DeNAのサステナビリティ

6. まとめ

今回は、健康経営に優れた企業が選定される「健康経営銘柄」について解説しました。健康経営に本腰を入れる企業が増える中、東京証券取引所が選定する「健康経営銘柄」は、そうした優れた取り組みを行う上場企業を投資家に紹介する重要な指標となっています。

健康経営銘柄の選定は、各社の「健康経営度調査」の回答をもとに行われます。経営理念、体制、施策の実行状況など多岐にわたる観点から総合評価され、一定の財務指標も考慮されます。2024年は情報開示や女性の健康課題への対応が重視されるなど、毎年見直しが行われています。

健康経営銘柄の認定メリットは、従業員の生産性向上や離職率の低下、優秀な人材確保、企業ブランドの向上など多岐にわたります。企業として健康経営に取り組むことは、従業員の幸福度向上にとどまらず、中長期的な企業価値の向上にもつながります。健康で活き活きと働くことのできる環境づくりは、持続的な成長の鍵となるはずです。

健康経営の実践は企業の課題解決につながる有力な手段ですが、「何から始めれば良いかわからない」「現状の取り組みで十分かわからない」と戸惑う企業も多いのではないでしょうか。

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